第15回 「川崎キ−61 三式戦闘機1型丁」を作る。

 

今回は日本機の中でもお気に入りの1つである、「三式戦 飛燕」を制作します。


1.中身はこんなです

クリアーを含めてランナー5枚。部品点数は少なめです。


2.胴体内部の組み立て

ザラリと具の準備。

 

C119(サンドイエロー)+C62(つや消しホワイト)で機体内部色を調色。

インストの色指定より若干暗めにアレンジしてみました。 

 

コックピット内部の機器類の塗装をしています。

飛燕の機体内部は手元に良質の資料が無かったので、他のモデラーさんの作例やら他の日本機やらを

参考にしつつ、筆と爪楊枝でチマチマと塗り分けてみました(→この模型、史料的価値はまるでありません)。

組んでしまうと風防の内側で見えにくい部分なので、自己満足の世界ですね。

江戸っ子は裏地に金をかける、みたいな。 

これの完成後にモデルアートから良質の飛燕資料本「モデルアート プロフィール」がリリースされました。

制作の際は是非お手元に・・・(笑)

 

エッチングのシートベルトはガスバーナーで焼きなまして、プライマーを塗ってから艦底色と銀色で仕上げました。

渋い。

 

瞬着留めは勇気が要るので、エッチングパーツとプラの接着には木工用ボンドを使ってます。

酢酸臭はシンナーよりまし、リモネンには劣るけど、窓が締め切りでも特に害が無いから安心です。 


3.胴体・主翼の組み立て

 

仮組みをしたらラジエーターのガワと中身の間に隙間が出来て、不細工なコトが分かったので、ラッカーパテで埋めてるところです。

これは溶きパテではなく、パテのチューブからストレートに出して盛り付け。 

 

具を詰めた胴体を貼り合わせてギュウギュウ挟んでます。 

本来はこの状態で24時間以上放置するのが吉だそうですが、とりあえず半日放置して次の作業へ。

 

中央右側のパーティングラインにはみ出した接着剤が固まってるので、ペーパーがけする直前。

600番→1000番→1500番(1500番で『水研ぎ』をやります)で、ほぼ元の平滑度に戻ります。

だんだん形になって参りました。

胴体に主翼と水平尾翼まで取り付けた状態をヒコーキ模型用語で「士の字」と申しまして。

一気呵成の完成、はたまた「もーいーや」の熟成に入る分水嶺であります・・・

 あ、まだ自分のは水平尾翼が無いので「十の字」ですね(笑)

 

計器盤は筆塗りをキャンセルしてデカールでやっつけました。複雑形状なので貼りにくかったです(泣)

デカールは白黒2色で寂しかったので、フィルムの上から赤色を追加塗り。 

 

胴体と主翼の接合部のスキマもパテで修正。

ペーパーがけ直前の様子です。中央下と右上の白っぽいところがラッカーパテを盛ってあるところです。

 

ペーパーがけ終了。

余分なパテを削り落とすことで隙間・傷がツライチになってるんですが、写真だと中々分かりにくいかも?

 


4.機首20ミリ砲の工作

戦闘機のキモのひとつ、武装についてです。

飛燕1型丁の胴体には20mm機関砲(陸軍機なので九九式2号ではなく、ホ5です)2門が装備されていまして、

キットにもプラ銃身がセットされています。ただし金型の抜き方向の関係上、銃口は開口していないので、

コレを再現するにはピンバイスの手作業で開口するか、真鍮パイプを銃身に加工して付属パーツを置き換えるかの2択となります。

 紫電をこさえたときは翼内銃を真鍮パイプ、翼下ガンパックをプラの開口と、混在させて作りましたが、

並ぶと精度の違いが歴然・・・ちとカッコ悪いです(苦笑)

 

両者の比較写真を載せてみました。

真鍮パイプは外径1.3mm、内径1.1mm(つまり肉厚0.2mm)。必要な長さを切り出すだけではストレートな管に過ぎないので、

先端を焼きなまして柔らかくしてからケガキ針のようなツールを押し込んで、ラッパ型のテーパーが付いた銃口に加工するつもりです。

作業自体は単純ですが、2門を同形に仕上げるのは少しコツが要ります・・・(焦)

 

機銃口にパイプを差し込むテスト。ことによると接着作業が要らなそうなくらい、タイトな合い具合です。

 

ホ5機関砲が出来上がりました。左下の銃口、わずかにラッパ型に開いてるのが分かるでしょうか?

初めはキャラメル箱との比較で撮りましたが、余りに大小比較が無意味なので、下のカッティングマットの1cm目盛りで大きさを想像してください。

長さが1cmほどの細かいパーツです。 あ、そしたら粒キャラメルと撮れば良かったのか(笑)!


5.エンジン排気管の工作

飛燕は液冷なので、エンジンパーツといっても排気管ぐらいしか手を入れる箇所が無いので

(パネルを開いてハ40エンジン本体を見せるなら別ですが・・・)、排気管を開口することにしました。

 

手順としては

 1.ケガキ針で当たりをつける                       

2.当たりをつけたところを0.6ミリ径のピンバイスでえぐって拡げる

3.円形の穴をリューターで長円形に整形する             

だいたいこんな感じ。 

 

あと大きさ比較用に、またまたキャラメル箱とピンバイスを並べてみました。

フツーはタバコを置くんですが、タバコやらないんで(笑)


6.キャノピーのマスキング

キャノピーのマスキング技法を紹介します。 

マスクの仕方は人それぞれですが、自分はマスキングテープの小片を枠に沿って貼り込んでいく技法+アール部分は

マスキングゾル塗布で処理するのが好みです。 キャノピー全体に貼ってから枠を切り出す技法は、フリーハンドのカッティングで

直線を出すのが難しいことと、しくじった場合に透明パーツを刃で傷つけてしまうリスクがあることが理由で、敬遠してます。

あと既製品のマスキングシートを買うのはゼニが勿体無くて(笑)。 小片チマチマ技法は時間がかかるのが難ですが、

失敗のリカバーが容易なこと、パーツに傷を付けないことが大きなメリットなのでひそかにオススメ。三角形の小片を重ねれば、

ほぼあらゆる鋭角のコーナーにも対応できるんです。実例は上の写真にて・・・ 


7.敵味方識別帯の塗装手順

主翼の敵味方識別帯を塗装します。

(左写真)黄色塗料は下地色の隠蔽力が弱いので、下準備としてツヤ消しホワイト(C62)でグレーの成型色を隠し、発色を良くします。 

ついでに胴体の国籍標識の白フチも残りの塗料を有効活用して吹いておきました。

(右写真)敵味方識別帯は、RLM04イエロー(C113)に赤系を少量混ぜて橙に振った色を作ってエアブラシ。

 マスキングテープをはがすと、おおむね期待通りの仕上がりになりました。 

機体の銀塗装をするときには、今度は逆に警戒帯をマスクするわけですね。


8.主脚の工作

下北沢のSUNNYで、ファインモールドの飛燕用メタル製脚柱と座席を買ってきたので、早速使うことにします。

1260円也。高ぇ・・・(痛)

ちなみに座席はもう組んでしまったので、在庫の五式戦に廻します。 

キットの脚柱と並べてみると精度の差が歴然。金を出すだけのことはあると思います。

ブレーキパイプのクネクネ再現とか結構面倒なので、銭で時間を買うつもりで。

 

続いて面相筆で主脚オレオとブレーキパイプをチクチクと塗っているところ。金属パーツは塗装前にメタルプライマーを塗っておきます。

左が塗装前、右が塗装後の状態です。指定の黒色はカウリング色(C125)に置き換えて、若干明るめに表現しています。

 

 

時間的にはだいぶ先の作業ですが、脚カバーとタイヤを塗装して、瞬間接着剤で組み立てます。

銀色は機体基本色、黄色は敵味方識別帯と同色で。


9.プロペラの塗装手順

プロペラの警戒帯を塗るのに、下地隠蔽力の弱い黄色塗装の前段階としてガイアカラーのフラットホワイトで下地作り。

大まかな作業なので筆塗りでやっつけました。

C113(RLM04イエロー)で警戒帯の色を吹きます。

成型色のままのグレーの上に色が乗ってるところと較べて、発色は段違いにイイですね。

プロペラの警戒帯をマスキング。

プロペラブレードが3枚とも先端から3ミリ付近で幅がそろうように、テープの上にペンで長さを拾って、

ブレードの頂点に合わせてから貼っています。中心近くのテープは、インストの等倍ブレード図に重ねて貼ってます。

ほぼそろう・・・はず。

 

プロペラはレッドブラウン(C41)に少量明灰白色(C35)を混ぜて明度アップ、彩度ダウンさせた色合いにしてます。


10.全体の塗装作業

機首の防眩塗装(アンチグレア)を、指定のつや消しブラックより若干明るいカウリング色(C125)で塗装しました。

吹いた後でマスキングを貼り直したら、一部塗膜がテープに持っていかれてしまったので、筆塗りでリカバー→しかし表面の

ツヤに差が出来て不自然→ラッカーシンナーで筆塗り箇所を拭き取ってリテイク→もう一回エアブラシ吹きでリカバーのリカバー、と

かなり面倒くさい作業に。 しかし、これで完璧・・・と思う。

 

国籍標識(日の丸)、そして機体マーキングの赤を塗ったところです。 ミニ扇風機で乾燥させてます。

有名な244戦隊の小林少佐乗機は青色ラインに赤の尾翼、緑で斑状迷彩と非常にカラフルで模型映えするカラーリングですが、

作例が余りに多くてありふれてるので、その後乗り換えた赤色ライン、迷彩無しのマイナーバージョン(1945年2月頃)で仕上げることに確定。

赤はモンザレッド(C68)に先ほどのカウリング色を少量混ぜて明度を下げようと企みましたが、分量の加減をしくじって赤とは呼べない

地獄のような色(笑)になってしまい、あらかた捨ててまたモンザレッドを足して・・・で落ち着いた色を吹き倒しました。

カウリング色のはみ出しにかかる部分とキットの成型色のグレーに色を重ねる部分とで発色に差が出るので、下地の色を白なり銀なりで

そろえれば良かったかも知れません。

この形でほぼ真っ赤に塗ると、Bf109試作機の速度記録用特別仕様を連想しますね・・・。

 

 

新装備のサークルカッターで国籍標識を量産しています。

今まではコンパスの軸挿しにデザインナイフを取り付けて強引に切り抜いていたんですが、専用アイテムは流石に段違いにラクです♪

そしてデカールになっている主翼の日の丸の直径を求めるのに、ヒサブリに中学数学知識を動員。この辺までは難なくこなせるんですが、

高校数学のレベルになると途端に使えなくなるのはなんでだろう・・・(まぁ社会に出てから困ったことはないけど)? 

2oと3oの細切りテープをこさえて、胴体の赤ラインを再現しています。

ホントは微妙なアールが付くんですが、手作業での再現が至難なので、是非心眼で御鑑賞願います(苦笑)。

 あと尾翼も微妙〜な塗り分けなので、細部は爪楊枝にマスキングゾルの水割り

(ゾルを瓶から取り出して、少し霧吹きをかけた程度の希釈)を付けて処理しています。

日の丸と白フチですが、赤丸と白丸の中心が一致すればフチの幅が一様になるわけで・・・ 

丸く切ったマスキングテープの中心に針か何かを通して下との位置決めをすればカンタンだけど、パーツに傷をつける心配から

敢えてフリーハンドでフチ幅を微調整(コンマ何ミリのエライ細かい作業です!)して貼ってます。当てをすれば傷の心配もないのかなぁ・・・?

これは次作の課題ですね。

赤部分をマスクして日の丸のフチを白塗りしたら、いよいよ銀塗装です。

サークルカッターで切り出した日の丸マスクは中心にコンパスの針穴があいてるので、テープの細切れをパッチしときます。

ヘソを隠さないと後々エライことになります・・・!


いよいよ銀塗装開始です。

外板をパネル(スジ彫りで囲った部分)ごとに色調を変える塗装で仕上げたいので、暗めに調色した銀で全面塗装→それを残す部分に

マスキング→少し明るい色で全面塗装・・・の繰り返し。まだら迷彩キャンセルなので、外板そのものに表情を持たせたいと思います。

白フチと赤ラインの境界をマスキングゾルで分割しようと企んでいますが、ナイフにゴム状のゾルがくっついてきてしまい、あえなく失敗。

銀塗装の上からリタッチで赤を塗ることにします(泣)。

最初にフラップの羽布部分をマスクするため、銀(C8)と明灰白色(C35)を2:1で混ぜた「濁り銀色」で塗装します。

ついでに赤のはみ出しも同じ塗料のの残りで上塗り。ちと飛燕らしくなってきました。

 

フラップをマスキングしてさらに鮮やかな銀をかぶせます。

 

ラインに沿って、マスキングテープでパネルの型を作っていきます

 

 

全面塗装したスーパーシルバー(エアブラシ用・C159)はイイ光沢を出しますね。

定番の8番シルバーよりもジュラルミン風味が全然上。


11.仕上げの作業

スミ入れ直前。キレイめ完成派はここらへんで止めておきます。

スミ入れの前に、銀塗装の荒れを直すのに2000番のサンドペーパーで水研ぎをかけました。

写真で判るほどの見た目変化が無いので、比較画像はナシです。スリスリして一皮剥くと、前段階で吹いた日の丸との

塗膜段差がなくなり、指で触っても引っかからないツライチになります。厳密に言えば、ツヤと粒子の差で生じる摩擦抵抗は

赤と銀で違うので、摩擦の違いは感じるんですけどね・・・(苦笑)

 

タミヤエナメルのフラットブラック・フラットブラウンを同量混ぜて、薄ーく溶きます。

陰を黒1色で表現すると不自然なので、グレイ系でもOKです。

筆で溶液(スミ)を機体表面に乗せると、毛管現象で瞬間的にスジ彫りに沿って溶液が拡散します。

乾燥したらシンナーを含ませたティッシュで余分な塗料を拭き取って、スジだけにスミを残すという寸法。

まだ拭き取りがこれからなので、小汚い有様ですが。

ふき取り終了の状態。スミ入れ前後は写真だとあんまり差が分からない・・・

デカールと本体表面が密着しないと乾燥後に空隙がテカってしまう「シルバリング現象」の原因になるので、

デカールを貼るところは表面を平滑にするコーティングとして、ツヤ有のクリアー塗料(C155 スーパークリアー)を吹いておきます。

デカール貼り付け自体はセオリー通り。垂直尾翼の244戦隊の部隊マークは余分な透明フィルムをトリミングしてみました。

WW2日本機のコーションマークは「サワルナ」「フムナ」と単純明快で楽しいです(笑)!

同時期のドイツ機なんかは、黄色三角とか多用してシンボル化が進んでるのに・・・参考にコックピット周りをアップで撮ってみましたが、

デカールが良く馴染んで、撃墜マークとか、どこまでがデカールフィルムか判別できない勢いであります(ニヤリ)。


12.完成

バックに資料本を置いてみました。調布飛行場の風景が表紙になってます

 

フォトショップでカラーをセピア調にいじり、さらに写真の粒子を荒らして昔の写真っぽく加工してみました

完成写真はもう少し撮り貯めて、近日アップの予定です。


参考資料

 大日本絵画 「モデラーズ・ワークショップ 日本陸軍機 戦闘機編」

 大日本絵画 「スケールアビエーション Vol.27」

 大日本絵画 「飛燕戦闘機隊 帝都防空の華 飛行第244戦隊写真史」

 KOEI 「ミリタリーコレクション6 日本陸軍戦闘機」

 芸文社 「マスターモデラーズ Vol.36」


 

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